2013年11月29日金曜日

2013/3/24 13:30 県民健康管理調査「甲状腺検査」説明会 in 会津での説明についてのコメント

 鈴木教授のメールアドレスが見当たらないので、同氏の所属される 器官制御外科学講座 http://fmusurg.com/contact.php からメール(2013/3/25) 
 2013/11/29現在、返答はいただいていない。ただし、(平成25年11月27日開催)「県民健康管理調査」検討委員会 第1回「甲状腺検査評価部会」
 をみると、年齢についての記述は消えたようである。もちろん、私のメールを読んで対応されたわけではないと思うが。
 ただし、閾値っぽい記述、Cardis et al.(2005)(無料pdf)のケース=コントロール分析で集めたサンプルにおける線量分布をチェルノブイリ全員の分布ととられかねないような表示をしていること、さらにこの論文では線形モデルが最良であることが(あいまいだが)記述されていること、被曝者について全固形ガンを対象に行った結果が混同されていることなどを再度指摘する予定。

 この他、私の行った甲状腺の分析結果 その1 その2 をお知らせしたり、研究者へのデータ公開、甲状腺ガンが判明した方とそうでない方のケース=コントロール研究の提案メールを同氏もしくは
放射線医学県民健康管理センター に送付したが、いずれも回答はいただいていない。


----------------以下が2013/3に送付したもの(Web公開用に文意を変えない程度でリンクの表示を変更した)。

 慶應義塾大学商学部でマーケティング・リサーチ(統計学の応用のようなこと)を教えています。その関係で被爆者データの再分析などを行っており、関連文献もサーベイしています。
 昨日の甲状腺調査説明会で 放射線の影響について、「20才以上であれば、100mSv以上であればがんが生じる。」と説明されました。

 動画
  00:59:49ごろ 以降。


出所) http://www.ustream.tv/recorded/30307437 の上記時間のキャプチャ。

 これについては、ICRPや被爆者の実証結果からも支持されていない閾値モデルを想定しておられるように聞こえます。実際、投影されている画像でも100-200mSvでと記されていますので、それ以下では発生しないという閾値モデルを想定されているようです。
 一方で、100mSv以上であれば「必ず」生じるともとられかねません。資料および説明の変更についてご一考いただきたくメール致します。

以下、ご参考。

 例えば被爆者の調査
 固形ガン全体については 閾値無しの線形モデルが支持されています。
論文 

  同様に、甲状腺ガン発症についても、 線形モデルが支持されています。
概要 
論文 
  →これのFig1

さらに、この論文にあるように成人への影響を示唆する結果も集積されつつあるようです。
 以上よろしくお願いします。


2013年11月17日日曜日

帰還に向けた安全、安心委員会配付資料の問題点


 メールアドレスがわかった、数名の委員の方々、および規制委員会には個別に若干文面をかえて送信した(11/17)。
 typoなどはその後、適宜修正した。
 Koya et al.(2012)について誤った解説を修正(5/15)。(p=0.11は10%水準では有意ではないが、このサンプル数、分析では注目すべき結果だと考えるので、そのように解説。→LNTを前提にすれば、線量区間を区分して検定せず、線形モデルで検定すれば10%水準で有意になる可能性があるとも考える。)

第3回資料(第1回の再配布) 線量水準に関連した考え方 
http://www.nsr.go.jp/committee/yuushikisya/kikan_kentou/data/0003_05.pdf

この資料は全体的に出所が古くかつ、引用の一貫性がありません。
例えばUNSCEAR2000を数カ所引用していますが、UNSCEARは、その後下記のURLに あるように
http://www.unscear.org/unscear/en/publications.html

UNSCEAR 2006 Report: "Effects of ionizing radiation”
UNSCEAR 2008 Report: "Sources and effects of ionizing radiation".
UNSCEAR 2010 Report: "Summary of low-dose radiation effects on health".

さらに最近は子供に注目した
UNSCEAR 2013 Report: "Sources, effects and risks of ionizing radiation”.
Annex B - Effects of radiation exposure of children
をまとめています。

 これらの中で、UNSCEAR 2010はlow-doseに注目したものなので、引用するなら ばこれを重視すべきです。以下、「考え方」の

1.放射線による健康影響についての科学的知見(100mSv)について

 に記載されている項目の問題点を指摘します。丸数字、出所は同資料からの引 用。→が私の追加情報です。

① 放射線の健康影響に関する科学的知見を国連に報告する機関である「原子放 射線の影響に関する国連科学委員会(UNSCEAR)」の報告書や放射線防護に関 する基準の策定に当たって国際的に広く採用されている「国際
放射線防護委員会(ICRP)」勧告等によれば、以下の点が明らかにされている。


→科学的知見なので、UNSCEARを引用すべきだが、ICRPも参照。さらに前者につい ては以下にあるように、2000をいまさら引用。周知の通りLow dose に絞った 2010reportが出たばかり。最新の知見を援用するのが常識です。


② 100mSv 以下の被ばくでは、あるしきい値を超えて被ばくした際に発生する 健康影響(「確定的影響」という。具体的には、皮膚障害や不妊などの「組織 反応」を指す。)は確認されていない(注1)。
(注1)ICRP Pub.103 (60) 「約100mGy までの吸収線量域では、どのような組 織も臨床的に意味のある機能障害を示すとは判断されない。」(Sv 単位につ いては、局所毎の被ばくにおいて、Sv≧Gy であるため、総和を取って、約 100mSv≧約100mGy の関係が成り立つ。以下同じ。)」


→科学的知見なのでUNSCEARを参照すべき。

③ 被ばく線量の増加に伴って発症率が増加する健康影響(「確率的影響」とい う。具体的には、がんや白血病等を指す。)については、しきい値がないと仮 定しても、100mSv までの被ばく線量でのがんのリスクは疫学的方法では直接 明らかにすることは困難というのが国際的な合意であり(注2、3)、100mSv 以下の被ばくでは、他の要因による発がんの影響によって隠れてしまうほど小 さく、放射線による発がんのリスクの明らかな増加を証明することは難しいと されている。
(注2)UNSCEAR 2000 Annex G.510「約100mGy をはるかに下回る急性線量にお いて影響の明白な兆候を示すことには統計的な限界が付きまとっている。」
(注3) ICRP Pub.103 (A86)「がんリスクの推定に用いる疫学的方法は、およ そ100mSv までの線量範囲でのがんのリスクを直接明らかにする力を持たない という一般的な合意がある。」


→UNSCEAR2010では

 (Paragraph 25) Statistically significant elevations in risk are observed at doses of 100 to 200 mGy and above. Epidemiological studies alone are unlikely to be able to identify significant elevations in risk much below these levels.

 とあり、100mSv以下では認められないという記述はありません。
また、”Epidemiological studies ***alone*** are unlikely to"とあるよう に、疫学だけでなく、DNAレベル、動物実験などの結果も併用することが記載され ているが、そのことがまったく無視されています。
 さらに、後段の「100mSv 以下の被ばくでは、他の要因による発がんの影響に よって隠れてしまうほど小さく、放射線による発がんのリスクの明らかな増加 を証明することは難しいとされている。」部分の出所がありません。

 なお、上記のUNSCEARの記述は被曝者の死亡の分析13報に基づくものですが、私の
LSS(Life Span Study) 13報 被爆者データのRによる分析 
http://nonuke2011.blogspot.jp/2012/05/lsslife-span-study-13-preston-dl-y.html
 にあるように、データを低線量区間に限定して、サンプル数を低下させる分析自体が不適切です。私の再分析にあるように、全データを用いて閾値の存在を仮定するモデル、仮定しないモデルなどを推定して情報量基準でモデル選択するという標準的な手法を使えば、線形モデルがもっともあてはまりが良好であることがわかります。


④ 以上の100mSv 以下の被ばくに関する健康影響の評価は、短時間での被ばく による影響の評価であるが、長期間にわたる被ばくの場合は、積算線量が同じ 100mSv の被ばくであっても、短期間での被ばくに比して、より健康影響が小 さいと推定されている(注4)。
(注4) UNSCEAR 2000 Annex G.512「腫瘍発生の有意な増加をもたらす最低線量 は一般には遷延被ばくによる方が急性被ばくよりも高い」


→UNSCEAR2010 paragraph 26) Overall. the cancer risk estimates from these studies do not differ significantly from those obtained from the studies of the atomic-bombing survivors in Japan.
とあるように発ガンリスクについては、原爆被曝者のような短期的(高線量率)、 Mayak,Techa,Chernobylなど長期的被曝(低線量率)とも変わらないことが明示 されている。
 ただし、この文章のあとには、
 By contrast. studies on human populations living in areas with elevated natural background radiation in China and India do not indicate that radiation at such levels increases the risk of cancer.
 高線量地域では発ガンリスクが観測されていないとある。しかし、これらに関する原論文(下に例として3つをリスト)によると、DNAレベルでは変異chromosome aberration が生じていることが示されている。またKoya et al.(2011)では発達障害についてp=0.113が見いだされています。

Wang et al. (1990), "Thyroid Nodularity and Chromosome Aberrations among Women in Areas of High Background Radiation in China," Journal of the National Cancer Institute, 82 (6), 478-85.

Kumar et al. (2012), "Evaluation of Spontaneous DNA Damage in Lymphocytes of Healthy Adult Individuals from High-Level Natural Radiation Areas of Kerala in India," Radiation Research, 177 (5), 643-50.

Koya et al.(2011), "Effect of Low and Chronic Radiation Exposure: A Case-Control Study of Mental Retardation and Cleft Lip/Palate in the Monazite-Bearing Coastal Areas of Southern Kerala," Radiation Research, 177 (1), 109-16.


⑤ 子どもや胎児への影響についても、100mSv 以下の被ばくでは、年齢層の違 いによる発がんリスク等の差は確認されていない(注5)。
(注5)D. L. Preston, et al. Solid Cancer Incidence in Atomic Bomb Survivors:1958–1998; RADIATION RESEARCH (2007)

→ここだけなぜか単発の論文。この論文は被曝者のガンの発症についての分析。 この論文ではAll solid cancersについて線形モデルのあてはまりが最良とさ れ、TABLE 10にあるように、ERR(excessive relative risk)の被曝時年齢Age at exposure (percentage change per decade increase)のパラメータは -17%  (CI=-25%; -7%)。つまり,被曝時年齢が10才高いと発ガンリスクが17%低下する。逆に言えば10才若いと17%増加することが示されている。論文の誤読と考え られる。
 さらに、UNSCEAR2010では、(25) Risk estimates vary with age. with younger people generally being more sensitive; studies of in utero radiation exposures show That the foetus is particularly sensitive, with elevated risk being detected at doses of 10 mGy and above.
 とあるように子供、特に胎児については10mGyでもリスクが高まることが明示 されている。

 さらに UNSCEAR2013 では部位別のリスクを比較し、breast, brain, thyroidガンなどでは大人よりも子供の方がリスクが高いことを示している (Table13)。なお0.5Gy以下では観測されないが、それ以上の被爆であれば、 determinisiticなリスクについても子供の方が影響が強いことが示されている (table 14)。


⑥ ヒトにおける放射線被ばくによる遺伝的影響については、疾患の明らかな増 加を証明するデータはないとされている。(注6)
(注6)UNSCEAR 2000 Annex G.177「ヒトの疾患に結びつくような遺伝的影響 について、定量的情報を与えるような直接的データは今のところない」


→UNSCEAR2010 p.12からの B. Heritable effects of radiation exposure
Paragraph 36). Unlike the snuiies OIl radiation-associated cancer, epidemiological snldies have nol provided clear evidence of excess heritable effects of radiation exposure in humans. 中略 

Neither do they confirm there is no risk of heritable effects, because detecting a small excess incidence associated with radiation exposure above a fairly high incidence in contaminated populations (table 2) is difficult.

 人間については、「明確」な遺伝的な影響は観察されていない。ただしTable2に あるように遺伝的な欠陥は頻度が高いため、放射線による影響を検出しにくい という限界がある。

 Paragraph 38. The clearest demonstrations of the heritable effects of radiation exposure come from extensive experimental studies on animals at high doses, particularly laboratory mice. 中略
Until recently, the doubling dose derived from mouse studies alone was estnnated to be 1 Gy, and this was applied to estimate hereditary effects in human populations receiving low-dose exposures over many generations.

 マウス実験では観測されているので、それの結果を用いて人間における遺伝的影響のリスクを推定している。→結果がTable2


 さらに、この資料では触れられていませんが、非ガン影響も存在。。 
 c. Radiation-associated non-cancer diseases
41. Radiation exposure of the developing embryo or foetus during pregnancy can also contribute to the appearance of non-cancer diseases in children. 中略 the Committee considers that there is a threshold for these effects at about 100 mGy.
→閾値は100mGy程度。

43. There is emerging evidence from recent epidemiological studies indicating elevated risks of non-cancer diseases below doses of 1 to 2 Gy. and some cases much lower.
→疫学によって様々な証拠が集まりつつある。 1-2Gyだが、もっと低いものもある。

 このように「考え方」で提示されている「科学的知見」は古く、偏ったものです。 これを前提にした議論は無意味と考えます。少なくとも春日委員が指摘された ように、こども、妊婦のリスクが高いこと、それへの対応を明示すべきです。

 なお、ICRP 111 では、帰還のみならず移住も選択肢としてあります。帰還の みに偏った議論はすべきではないことも併せてお伝えしたいと思います。

 以上よろしくお願い致します。

2013年10月25日金曜日

福島甲状腺調査の分析2



福島甲状腺調査の分析2
 11/26 追加検証のための分析を最下部に追加。

 以前、H23の結果について分析を行った(こちら参照)。その後、H24年分の市町村別分布も公開されたので、これらを加えた25サンプルで分析を行い、欧州低線量被曝研究ワークショップ:Fukushima sessionで報告した。その際、作成した英語版のポスターを下記に添付する。

 H23はB判定が話題になっていたので、5.1mm以上の結節を分析した。しかし、結節の成長が遅いのであれば、小さいものについても分析すべきであると考えて、5mm以下についても分析した。問題意識をconjectureとして示すと下記の通り。

  • Conjecture
    • 放射線の影響によって結節ができたのだとする。しかし結節の成長はある程度遅いのだとする。であれば、結節を大小に分けたとき、小さい結節の方が、大きい結節の発見される人の数よりも被曝量との相関が高いだろう。

各図表 の意味は下記のとおり。
  • Tab.1 甲状腺調査の判定結果をまとめたもの。
  • Tab.2 推定に用いた4種類の線量の概要。
    • 上記H23で説明したWHO、放医研NIRS内部被曝、福島県外部被曝、福島県内部被曝
  • Tab.3 各市町村のこれら4つのdose一覧。
    • 赤字:WHOが推定していないのでこちらで推定。方法は上記H23を参照。
    • 青字:こちらで8mSvと設定した。
    • 福島外部、内部被曝線量についてはカテゴリ化されて公開されているのでこちらで市町村別に平均算出。
      • WHO(NIRSも)の線量推定は汚染度の高い地域については細かく推定しているが、その他については同一の値。しかし、福島外部線量は、それらの間でもばらつきがある。→WHOはこれら最新の情報を用いた再推定をすべきである。
      • 以下の分析はH23、H24についての結果のみを用いる。
        • H25の結果も一部公開されているが、結果確定割合が半分以下、高校生が少ないなど年齢分布も異なるため。
  • Fig.1 横軸にWHO線量、縦軸に5mm以下の結節があると判定された人の割合(分母は結果確定数)。
    • 赤 2011=H23 実施対象
    • 青 2012=H24 実施対象
      • 汚染度の高い地域から検査が行われた。
    • ○ 観測値:○の大きさは受診者数(結果確定者数)に比例
    • x 後述のモデルで推定した結果を用いて推定した結果
  • Tab.4 (WHO線量についての)ポアソン回帰の結果
    • 5mm以下、5.1mm以上、これらの合計、をこの表にある変数群で説明(意味はH23分析を参照)。
      • 平均年齢、4つの年齢層分布割合を入れて推定したが、従属変数によって有意になるものが異なったので、AICを比較して最良のものを選択した。
    • WHO線量は、5mm以下、5.1mm以上、これら合計について、いずれも有意となった(*がついているもの)。
      • Fig4で相関があるように見えた。ただし、受診者年齢などいろいろな要因が作用する可能性があるので、この表にあるような変数の影響を考慮して、線量と結節数の関係を分析した。その結果、「関係がないという」帰無仮説が少なくとも10%水準で棄却されたことを意味する(いい加減な表現をすると「関係がある」ということになる)。
        • z検定した結果を示したが、自由度18のt検定すべき。そうすると*が一つ小さくなるものもあるが、本質は変わらない。
      • z-値をみると5mm以下の方が5.1mm以上の推定値のそれよりも大きくなっており、(5.75 vs 2.71)、上のconjectureが確認されたといえるだろう。
        • Fig1 にあるように○とxはだいたい一致。このモデルのあてはまりはよい。
  • Tab.5 他の線量についても同様に分析。線量部分の推定結果をまとめたもの。最終的な結果なので下記に拡大。
    • WHOは上の再掲。放医研内部被曝NIRS、福島県外部線量ともに5mm以下については有意だが、5.1mm以上については有意になっていない。
      • これらについてもconjectureが確認されたといえる。
    • 福島内部被曝線量については有意ではない。
      • 他の3つは初期被曝に注目しているが、これは2011年6月末~現在まで継続中のもの。結節が初期の被曝による影響であることを暗示する?


  • その他分析
    • はずれ値と思われる浪江、飯舘などを除外して再推定。
      • 浪江をはずすとWHO線量の有意水準は低下するが変わらず有意である。
      • 飯舘をはずすと福島外部線量は有意ではなくなる。
        • ただし、国会事故調の調査結果によると飯舘の多くの方々は長い間避難せず残られた。はずれ値として除外することは不適切であろう(こちらの下部のグラフ参照)。
        • 浪江なども早く避難したものの、同調査報告によると浪江の方の半数以上が5回以上避難。中にはより線量の高い地域に非難された方もおられる。よって、これもはずれ値として除外すべきではないだろう。
    • (10/27 追記) 避難地域区分ダミー(警戒、計画的避難、緊急時避難準備)を導入すると線量は有意ではなくなる。
      •  これは線量に応じて区分を決定しているためであろう。ただし、同一町村でもこれらが混在するなど、処理に工夫が必要である。
    • 甲状腺ガンについても同様に分析したが有意とならなかった。
      • 43(合計では44とあるが市町村別データだと43)と少ないためだと考えられる。
      • ただし、甲状腺ガン人数と結節人数には正の相関がある。
  • 結論
    • 被曝量と結節の間には正の相関があること(特に小さいもの)が明らかとなった。
      • N=25、市町村レベルの集計データ。エコロジカルな分析ではあり、因果関係を示すものではない。
    • これらを踏まえると今回の結果は、将来の甲状腺ガンの発生の早期警戒なのかもしれない。発症しないという決めつけるのではなく、適切なフォローアップが必要である。
  • 追加意見
    • WHOの線量推定はそもそもpreliminaryなもの。健康影響も含めて再推定すべきである。
    • 県や国も適切、迅速な対応、情報公開すべきである。詳しくは(H23の結果参照)。


  • 追加検証のための分析
    • 放射線によって半年から数年で結節が発生、成長するとは考えられない。汚染度が高い地域では(無意識に)、あいまいなものはクロに拾い上げるという心理が働いた結果では無いか。という指摘をMELODI WS参加の日本人疫学者から指摘頂いた。
    • 第13回「県民健康管理調査」検討委員会(平成25年11月12日開催)
      • 資料2 県民健康管理調査「甲状腺検査」の実施状況について
        • 資料5市町村別二次検査実施状況の(2次検査)から
        • 結果確定数に占める、A1(異常なし) の割合を縦軸、WHO甲状腺線量10才を横軸にプロットした。
          • (H25分、H24のいわきの一部は未確定が多いので除外)。
          • 線量についてはH23のついて分析を行った(こちら参照)。
        • 線量の高い所ほど(本当はA1なのに)1次でA2以上に拾い上げたのであれば、2次検査では線量が高い所ほどA1に再分類される割合が高いはず→グラフにあるように、そのようなことはない。 



  • ポスター JPEG版は下記  pdf版が必要な方はこちらから。 (A0サイズ)


2013年5月31日金曜日

原子力規制委員会設置法の一部の施行に伴う関係政令の整備及び経過措置に関する政令(仮称)案に対する意見募集について|意見公募(パブリックコメント)|原子力規制委員会 へのパブコメ  2013/5/30 送信
 半角記号などは受け付けないので、下記を文字変換して送信。



p.4  発電用原子炉, 試験研究用等原子炉
→最近のJ-PARCでの放射性物質発生、排出による損害も生じうる。それを含んだ条文にすべきである。
例 試験研究用原子炉および放射性物質発生の恐れのある実験設備
 もしくは 放射性物質発生の恐れのある実験設備 を別途設置する。
 これにともなって、 設置申請、運転計画なども提出させることとする。


p.10 発電用原子炉の運転の期間の延長に係る期間の上限
閣議決定されたように、原則40年で廃炉である。この条文自体が不要である。
どうしても入れるならば、「40年で廃炉を原則とする。」ことを第二十条の六 冒頭に明示し、延長をみとめる条件を明示する必要がある。

p.11 原子力施設検査官などの資格
 相当の知識、経験はあいまいである。 せめて 炉主任 資格取得者、もしくは自前の試験であり、受験などに問題が生じる場合には、米国NRCでのlicenceを取得するなどすべきである。
http://www.nrc.gov/reactors/operator-licensing/licensing-process.html

2013年5月17日金曜日

福島県健康調査 甲状腺調査 について 市町村レベルでの分析
(2013/10/25若干改訂→受診者数をウエイトとする必要はないので、それについての記述、結果を削除。またt検定の方が適切だが手抜きしてz検定しているので、若干*の数が減ることにも注意)
 
0.経緯
福島の甲状腺調査は、当然ながら個人別のデータであり、個人レベルでサイズや結節有無などと線量の関係を分析できるはずだが、されていない。環境省のデータも公開されたが、

 環境省 報道発表資料-平成25年3月29日-福島県外3県における甲状腺有所見率調査結果について(お知らせ)

 調査対象者層が異なる(0-2才が含まれていない、福島とマッチングさせるための変数も充分にとられていない。→そもそもそのような分析自体想定していない)。など、まあ調査設計がひどい=福島と比較しづらい=感じ。

 情報公開クリアリングハウスさんのおかげで、H23年(被爆量の多い地域)の市町村別データが公開された。
 → 福島県民健康管理調査 23年度実績(市町村別甲状腺検査の結果を含む)

 これらを使って出来る範囲のことを分析した。

  上記データが公開された2013/4月末には、だいたい分析できたので、福島県(医科大)の健康管理センター、環境省の担当に電話で調査方法などを確認。→togetter  福島県健康調査(基本、甲状腺)、環境省甲状腺調査について

 しかし、サンプル数が少なく、不安定な部分もある云々で公開はしてこなかった。が、昨日からのstudy2007さんの分析や、それを巡るやりとり→ 
 H23年度福島県甲状腺検査市町村別結節割合と土壌汚染の関係について - Togetter
 を拝見して、避難関係の変数を追加して分析した結果を公開する。

 結論としては、H23調査で市町村別データが公開された13市町村について、結節サイズ5.1mm以上の人数(B判定)を分析したところ、WHOの推定(1年間)甲状腺線量と正の相関があった。ただし、浪江を除くと有意ではなくなるなど、注意が必要である。
 あくまで市町村レベルでの、各種データ間での(因果ではなく)相関であることに注意されたい。

 そのうち論文として投稿するかも知れないが、ここでは速報として引用なども簡略化する。


1 市町村別のデータ
下表にあるように、二つのデータを中心に市町村別データを整理。

 ・福島県民健康管理調査 23年度実績(市町村別甲状腺検査の結果を含む)
 ・環境省 報道発表資料-平成25年3月29日-福島県外3県における甲状腺有所見率調査結果について(お知らせ)

 線量についてはWHO,放医研、福島県WBCなどを利用。詳細は下の方参照。この他、国勢調査のデータもサンプリングバイアス検討のために利用(表には示してないが)。

表 市町村別データ(生データ)
注)黄色の3町はWHOは線量推定していないため、これらの地域で最も低い値を記入してある。出所は文中に大体示した。

表 市町村別データ(割合)


2 線量について
 線量について市町村別で推定、測定、公表されているものは、WHO,福島県基本調査外部線量、福島県WBC、放医研(内部被曝)、などがある。それらの中で、WHO(発生後1年間の甲状腺線量10才)が最も包括的なはずなので、それを用いる(外部、食物、呼吸を考慮)。
 → Health risk assessment from the nuclear accident after the 2011 Great East Japan earthquake and tsunami, based on a preliminary dose estimation
 ただし20km圏内の3町については推定されていないので、次の2シナリオを設定。
・同地域のなかでもっとも汚染度の低い15mSvとする。
・次の手順で、他の線量を用いて内挿して推定する。
 WHOの推定値がある10市町村について、線量を被説明変数とし、放医研、福島県基本調査外部線量、福島県WBCの各線量で重回帰分析。それをステップワイズで変数絞り込みした結果、放医研の「甲状腺線量1才児」のみがp=0.14となった(下表)。
 以下、Rからの出力をそのまま掲載する。通常のソフトと有意水準の表示が異なることに留意されたい。

表 線量内挿のための分析(従属変数:WHO線量、20km内3町を除く)

                   Estimate Std. Error t value Pr(>|t|)
(Intercept)           7.945     16.485    0.48     0.64
Thyroid.dose1yNIRS    1.588      0.969    1.64     0.14

Residual standard error: 22.1 on 8 degrees of freedom
  (3 observations deleted due to missingness)
Multiple R-squared:  0.251,Adjusted R-squared:  0.158 
F-statistic: 2.68 on 1 and 8 DF,  p-value: 0.14

 10%水準でも有意ではないし、R2も低いのだが、仕方ないのでこれを用いる。このパラメータと放医研の線量を用いて、3町の内挿値を求めた。

    放医研  内挿値
富岡町         10   23.82  
大熊町        20   39.70
双葉町         30   55.58

3 受診(回答)バイアス
表にあるように市町村によって受診率が異なる。被曝量が多い地域ほど心配して受診率が高くなる、といった傾向がある場合、それを考慮した分析を行わなければ、線量の推定にバイアスが生じる。
 これをチェックするため13市町村の受診率を従属変数、WHO甲状腺線量、国勢調査による総人口、男女比、平均年齢、15才未満人口の割合、人口密度を説明変数とした(割合なので)ロジスティック回帰分析を行った(検査数を重みとした)。さらに、ステップワイズ法で変数を絞り込んだ。
 その結果、人口密度、15才未満人口の割合などが有意となった。線量が有意とはならなかったことは、受診率の違いは、汚染度の高さ(への心配)ではなく、これらのデモグラフィクス要因によることを意味する。なお、線量については3町を15mSvとしても、内挿値を用いても有意とはならなかった
 以下では受診率バイアスを補正するために、傾向スコアを用いる。この手法では、R2が高いことが望ましい。このため、さらに、有意となった変数間の交互作用も導入した分析を行った。その結果、修正R20.83となった(下表)。
交互作用などがあるせいで、解釈は困難であるが人口密度の高い市部で受診率が高くなるようである。

   表 受診率のロジスティック回帰の結果
Coefficients:                                     
Estimate Std. Error t value Pr(>|t|)   
(Intercept)                          1.46e+02   4.00e+01    3.65   0.0082 **
人口密度                             1.13e-01   4.02e-02    2.80   0.0267 * 
人口性比                            -1.43e+00   4.10e-01   -3.50   0.0100 * 
年齢.総数.15歳未満人口割合          -1.16e+01   3.31e+00   -3.51   0.0099 **
人口密度:人口性比                   -1.16e-03   4.23e-04   -2.74   0.0288 * 
人口性比:年齢.総数.15歳未満人口割合  1.16e-01   3.40e-02    3.40   0.0115 * 
---Signif. codes:  0 ‘***’ 0.001 ‘**’ 0.01 ‘*’ 0.05 ‘.’ 0.1 ‘ ’ 1
Residual standard error: 14.7 on 7 degrees of freedom

Multiple R-squared:  0.901, Adjusted R-squared:  0.83 F-statistic: 12.7 on 5 and 7 DF,  p-value: 0.00212
注)検査数を重みとした推定結果。

4 結節との関係
1)データ
 5.1mm以上の結節もしくは、20.1mm以上の嚢胞があるとB判定とされ2次検査が推奨される。後者についてはH23は1名しかおられないので、前者に注目する。
 市町村別の5.1mm以上の結節と線量の関係を示す。まず直感的にわかりやすい、受診者に占める、5.1mm以上の結節がみつかった者の割合を示す。円の大きさは検査数に比例している。

図表  WHO推定線量と5.1mm以上結節の割合
注)線量について3町は15mSvとしたもの。円の大きさは検査数に比例。

 割合を従属変数とした分析もできるが、人数というカウントデータなので、ポアソン回帰分析の方が適切である。よって、市町村別の線量と5.1mm以上の結節がみつかった「人数」をプロットしてみた。人口および、受診者数が異なるために、この図を読むときには注意が必要である。
 なお、赤マークは後述するモデルで推定した結果である。観測値とよくあてはまっていることがわかる。

図表  WHO推定線量と5.1mm以上結節の人数(および推定結果)
注)線量について3町は内挿して推定したもの。円の大きさは検査数に比例。
赤はモデルでの推定値を用いて計算した予測値(内挿値)。

2)分析方法
 5.1mm以上の結節人数を被説明変数、下記を説明変数としてポアソン回帰分析を行う。なお、甲状腺ガンは女性に多いが、性別内訳については市町村別に公開されていないので用いることができない。

・log(1+線量)
 ポアソン回帰では、発生頻度パラメータをλ=exp(λ0+Σβx)のように定式化するので、logをとっておくと、この係数が1のときにはλが線量とともに線形に増加、1より小さければ逓減型、大きければ逓増型となる。LSSなどでもポアソン回帰の枠組みで推定しているが、ERR、EARで定式化し、かつ線形を仮定している。ここでは普通の統計パッケージでも推定でき、上述のように線形を前提としない推定を行った。
 参考→ LSS(Life Span Study) 13報 被爆者データのRによる分析

・受診者に占める6-10才の割合
  はじめの表にあるように0-5才、11-15才、16-18才の割合もあるが、被説明変数との単相関がもっとも高いこれのみを用いた。

 上述のstudy2007さんの分析を参考として、2変数も作成した。
・避難率
 3/12日23時59分ごろまでに避難した者の割合(国会事故調報告書住民アンケートの結果p.362第4部 被害状況と被害拡大の要因 (その1) | 国会事故調」よりデジタイザで読み取り)

・ヨウ素剤を配布したか?ダミー
 国会事故調報告書「4.4.2 防護策として機能しなかった安定ヨウ素剤」によると楢葉町、富岡町、双葉町、三春町で配布。今回のデータには三春町は含まれていない。
  第4部 被害状況と被害拡大の要因(その3) | 国会事故調


 さらに線量については、次の二通りを推定した。
・3町を15mSvとした場合
・内挿して推定した場合

3)結果
 下記には、上述の4つの説明変数すべてを導入し、3町については線量を内挿して推定した場合の推定結果を示す(ウエイトあり、なし)。
 線量のパラメータは正で1%水準で有意である。なお、3町の線量を15mSvとした場合でも有意水準には変化がなかった。
 
表 ポアソン回帰の結果 (ウエイトなし,
3町線量内挿)   
                        Estimate Std. Error z value Pr(>|z|)    
(Intercept)            -1.35e+01   3.10e+00   -4.36  1.3e-05 ***
log(1 + Thyroid.dose4)  5.57e-01   2.02e-01    2.76   0.0058 ** 
年齢別6.10p             2.25e+01   9.38e+00    2.40   0.0163 *  
避難率pevacuate          8.38e-04   2.24e-03    0.37   0.7079    
ヨウ素剤配布ダミーfg.iodine -3.51e-01   3.56e-01   -0.99   0.3242    
---
Signif. codes:  0 ‘***’ 0.001 ‘**’ 0.01 ‘*’ 0.05 ‘.’ 0.1 ‘ ’ 1
(Dispersion parameter for poisson family taken to be 1)
    Null deviance: 18.1174  on 12  degrees of freedom
Residual deviance:  6.6378  on  8  degrees of freedom
AIC: 64.49


4)頑健性の確認
 サンプル数は13市町村と少ないので、結果の頑健性を確認するために、1市町村づつ取り除いて12サンプルとして推定した(1つ取り除いた13通りを推定)。
 すると、どれか一つでも市町村をとり除くと避難率、ヨウ素剤配布ダミーは有意ではなくなった。不安定なので、これは、これ以降は入れないことにする。
 線量のパラメータについては、浪江町を取り除いた場合のみ、有意ではなくなる。

 サンプル数が少ないこともあり、若干の不安定さがあることには注意が必要である。

5)他の線量
 ここまでは、WHOの甲状腺線量10才(1年間)を用いた。WHOは1才、成人についても推定しているが、これらの相関はいずれも0.98と極めて高いため、結果は変わらない(はずである)。
 この他にも市町村別の線量を評価したものがあるので、比較のため、線量と6-10才の割合のみを説明変数として推定した(下表)。
 いずれも10%水準でも有意とはならないがNIRSについては10.5%であり、サンプル数が増加すると10%有意になる可能性はある。なお、WHOの推計は外部、食物、呼気からの線量をあわせて推計してあるので、これらを包含したものとなっているはずである。

表 他の線量を用いた推定結果(線量パラメータのみを抜き出したもの。
・放医研の1才児甲状腺線量
 データは→ 資料2 「甲状腺検査」の実施状況及び検査結果等について の24枚目(甲状腺線量の90パーセンタイル値:1才児)。もともと下記のWBCに基づいて算出されたもの。
                 Estimate Std. Error z value Pr(>|z|)
log(1 + Thyroid.dose1yNIRS)    0.322      0.198    1.62    0.105    

・福島県基本調査 外部線量
 データは→資料1 県民健康管理調査「基本調査」の実施状況について p.8から市町村別に平均値算出。
log(1 + ExtDose)    0.271      0.452    0.60  0.54974    

・福島県WBC測定値で預託線量1mSv以上と判定されたものの割合
 データは→平成23年6月27日~平成25年 3月31日まで の市町村別分布より算出。

log(1 + WBC1mp)   116.94      89.08    1.31     0.19    


6)環境省の3市調査
 環境省調査は0-2才を含んでいないため、福島調査とは比較が困難である。よって、あくまで参考値であるが、これら3市の線量を0として、年齢別分布も0-2才は含まれないことを無視して6-10才の割合を算出し、同様の分析を行った。
 ただし、福島甲状腺調査とは実施時期などが異なるため、これらの変数では表現できないなんらかの差異があると考え、コントロールダミー(fg.control :3市について1、福島県内は0)を導入した。
 コントロール変数をいれないモデル、入れたモデルのAICを比較すると、後者の方があてはまりは良好となった。つまり、これら3市とH23調査には体系的な何らかの差があるといえる。

 (ウエイトなしとした場合の)推定結果を示す。6~10才の割合の符号が、上の場合と逆転した。これは0-2才を含んでいない3市について無理矢理変数を導入したためと考えられる。ただし、線量パラメータは、いずれの場合も正で有意である。
 上記と同様、頑健性の検討を行った。上と同様、浪江を除いた場合のみ線量のパラメータは有意とならなくなった。6-10才の割合は抜け方によっては、有意にならない場合もあった。これは0-2才が含まれていないことを無視したためであろう。

表 環境省調査3市も含む(ウエイトなし、線量:3町は15mSv、3市は0mSv)
                      Estimate Std. Error z value Pr(>|z|)    
(Intercept)             -6.324      1.554   -4.07  4.7e-05 ***
log(1 + Thyroid.dose)    0.361      0.150    2.41  0.01599 *  
年齢別6.10p             -0.668      4.766   -0.14  0.88858    
fg.control               1.921      0.509    3.77  0.00016 ***
---
Signif. codes:  0 ‘***’ 0.001 ‘**’ 0.01 ‘*’ 0.05 ‘.’ 0.1 ‘ ’ 1
(Dispersion parameter for poisson family taken to be 1)
    Null deviance: 38.688  on 15  degrees of freedom
Residual deviance: 16.324  on 12  degrees of freedom
AIC: 85.56



5 まとめ
 本稿では情報公開クリアリングハウスさんの情報公開請求によって"はじめて"公開された、H23年の市町村別データ等を用いて分析を行った。サンプル数は13もしくは16市町村と小さいものの、全データを用いると、甲状腺線量(10才)と5.1mm以上の結節人数には、有意な"相関"がみられた。
 なお、浪江を除くと、有意ではなくなるが、同町は避難指示があいまいであったため、何度も避難し、かつ高線量地域に避難させられた割合も高くなっている(国会事故調報告書 第4部 被害状況と被害拡大の要因 (その1) | 国会事故調)。線量が高いと推定することには一定の合理性があると考えられる。
 参考までに、WHOの推定は当地で収穫された作物を継続して摂取するなど、過大に(安全側)に見積もられているらしいが、例えば全地域の被曝量を10分の1にしても、パラメータの有意水準は変化しないことに注意したい。

 この検査はH23年10月からH24年3月までに行われたので、福島原発事故から7ー12ヶ月しか経過していない。「チェルノブイリでは事故後4年から小児の甲状腺ガンが増加した」という報告からみると、早過ぎる感もある。ただし、ここでの従属変数はガンではなく「5.1mm以上の結節」である。医学的な観点からどうなのかは、筆者にはわかりかねるが、当時からみるとスクリーニング機器の性能は向上したのではないだろうか。前駆段階としての結節の発生を捉えたのかもしれない。いずれにしてもより精密な線量評価、分析が必要である。

 なお、結節のサイズヒストグラムをみると、(より線量が低いはずの)H24の方がサイズも大きく、H23よりもピークが右にずれているようにもみえる。それが有意な差なのかも、H23,24調査の対象者を併せて分析すればある程度のことがいえる可能性はある。

図表 結節のサイズ分布
H23 調査

出所)H23  (平成24年9月11日開催) 資料2 「甲状腺検査」の実施状況及び検査結果について →p.17 (3.8万人)
                H24 調査


 はじめにも述べたが、1時点でのデータを用いた分析であり、因果ではなく相関であることにくれぐれも注意されたい。

 最後に要望を述べる。

・予断をもたない検査、調査、診断、分析を
 「100mSv以下では、影響がみられない/影響はない?」という予断をもって調査が行われている感がある。そのような予断をもたず検査、調査、診断、分析をすべきである。
 なお、被曝者を対象としたLSSで100mSv以下に限定するとパラメータが有意ではなくなる、ということについては、下記にまとめたので参照されたい。
 → LSS(Life Span Study) 13報 被爆者データのRによる分析

・素早い分析を
 いずれにしても、このような分析は、ちょっと学んだことがあれば、すぐにでもできるはずである。H24についても市町村別の集計はされているだろう(電話で要望したが公開予定はないとのことであった)。公開が望まれる(自分で公開請求すればいいだけの話ではあるが)。
 ここでは公開された市町村レベルでの分析しかできなかったが、調査側には個人レベルでのデータもあるはずである。それを用いた分析を行うべきである。
 個人の線量と甲状腺調査は未リンクだというが、甲状腺調査の実施対象者は、H23年度は4万人である。多忙であることは理解するが、それらの個人線量の推定とリンクを優先すべきである。
 
・情報の公開
 繰り返すが、この情報は情報公開請求があってはじめて公開された。被災された方々への対応を最優先にすべきであることはいうまでもないが、市町村別レベル程度の情報は即座に公開すべき内容である。
 プライバシー云々を強調しているが、匿名化したデータは医学分野でも多く公開されている。例えば最近公開されたRad Res誌掲載の長崎大によるWBC測定では、個人レベルのスペクトル、避難経路が掲載されている。この他、米国も原子力関係従業者の匿名化個人データを公開している。広島大学では被爆者について公開している。→放射線関連データ源 - Togetter 参照)。
 個人のプライバシー保護は当然であるが、過度の非公開は隠蔽というイメージを与える。

・適切な調査、分析方法の検討
 togetter  福島県健康調査(基本、甲状腺)、環境省甲状腺調査について でまとめたように、福島県健康調査調査センターには未だ疫学担当の方はおられないようである。また、環境省の調査は、福島調査とは、まったく別々に行われている。このため、必要な変数が測定されておらず、年齢、性別、社会経済変数など、個人レベルでマッチングすることも困難な状況となっているようである。さらに、詳細な比較分析の予定もないという。適切な体制構築が必要である。



謝辞
市町村データを公開請求、公開された情報クリアリングハウスさん、@study2007さん、および H23年度福島県甲状腺検査市町村別結節割合と土壌汚染の関係について - Togetter でやりとりされている方々から多くを学んだ。謝意を表する。

2013年5月9日木曜日

 原子力規制委員会設置法の一部の施行に伴う関係規則の整備等に関する規則(案)等に対する意見募集ついて|意見公募(パブリックコメント)|原子力規制委員会
へのパブコメ   2013/5/9-10 送信

同じく
原子力規制委員会設置法の一部の施行に伴う関係規則の整備等に関する規則(案)等に関連する内規に対する意見募集について|意見公募(パブリックコメント)|原子力規制委員会
 →上のものは行政手続き、下は内規(審査ガイドライン中心)なので任意の手続き。提出先(HP)も異なっていることに注意。


以前投稿した
「発電用軽水型原子炉施設に係る新安全基準骨子案」に対する意見募集について
を再利用。 関係諸規則は多量なので、追い切れず。
 →ただし、引用先の変更、細かい修正なども多いので、それらに惑わされないように注意する必要あり。分割して投稿したので重複有り。半角かながあると受け付けないのですべて全角にして送信。下記はそれらをかき集めたものなので、重複、見づらいがご容赦を。

・個人的に重視しているのは(即時脱原発でokなので、このような基準自体不要だと考えるが、この案を行うとしたら)
 原因解明もしていないのに稼働させること。
 複数基設置、使用済み燃料建屋内併設のリスクの大きさ。
 5年猶予
 40年以上の 運転延長
 実効性の低さ
 罰則のないこと
などである。


1.手順などの問題(総論)
・福島原発災害の分析不足
 旧保安院への東電通報資料 http://www.nsr.go.jp/archive/nisa/earthquake/plant/1/plant-1-2303.html
によると、2011/3/11 23:48時点で、1号基タービン建屋内の線量が1.2msv/hに上昇した。 2012/ 3/19原子力学会特別セッション http://www.aesj.or.jp/information/session.html
で東電・宮田氏は、これだけの線量が観測されたので、液相からの漏洩だと考えられる、最終報告書では分析結果を報告したいと述べたが、残念ながら最終報告書には記述がない。
国会事故調も1号基における地震直後の漏水の可能性を指摘している。これにみられるように地震による影響は未解明である。この段階で新基準をつくっても意味があるものができるとは考えられない。

・手順の問題点
短期間であることは言うまでもないが、そのプロセスで国民の意見を取り入れていない。要点毎に国民の意見を取り込むべきである。

・国民への説明や意見を
この委員会に原発をとりやめるか否かを決定する権限、能力、意欲などがないことはあきらかではあるが、2030年には脱原発が決定されている。即座にやめることも可能である。それら原発の状況、ありかたを含めて国民に説明し、その意見を問うべきである。
今回の指針についても事業者に意見をきくだけでなく、国民への、説明、意見の反映を十分に行うべきである。

・世界最高水準ではない:時間をかけた議論が必要
世界最高水準の規制をめざしたはずであるが、活断層の考慮範囲はnrcよりも狭く、複数基立地の検討も簡単にしか行われておらず、事業者による申請時の各種調査、(運転時)検査も申請事業者による調査が是認されている。
日本の原子力法体系のいびつさの是正ふくめた長期的な議論が必要である。なお、更田委員は、13回委員会で、長期間止めるとまた別の懸念が生じると発言した。 http://www.nsr.go.jp/committee/yuushikisya/shin_anzenkijyun/data/20130131-anzenkijyun.pdf p.56 いい加減な原発を稼働させることこそ懸念すべきであり、上記発言を撤回すべきである。

・原子力産業界から便益を受けた委員の利用
新安全基準(設計基準)概要版では、「1.東京電力福島第一原子力発電所事故以前の安全規制への指摘」として項目が挙げられているが、国会事故調が指摘した、「規制の虜」への言及がない。電力会社、電事連などが学会をはじめとした団体に干渉し、基準を甘くしてきたことを自覚し、反省すべきである。
阿部、山口、山本委員は3年に限定しても原子力産業との共同研究など便益供与を受けている。これで中立な議論ができるはずはない。彼らをはずした中立な体制で議論すべきである。
なお、阿部氏のホームページによると、h15以降、三菱重工から研究費を受けている。今回のパブコメの論点とはずれるが、3年という年限を切らず、過去すべてを申告させるべきである。
http://www.kz.tsukuba.ac.jp/~abe/budget.htm

・検討範囲の不足
○複数基立地の禁止、使用済み燃料の原子炉内併設禁止について、
福島原発災害であきらかなのは複数基立地、および原子炉建屋内に使用済み核燃料を保管するリスクである。まずは、これを禁止すべきである。

原子炉を隣接、さらに燃料プールを建屋内に設置するということは、単一の原因によって同時に複数の問題が生じ、さらに、それへの対応がより困難になる。このことは事故のプロセスをみるだけでも明らかな課題である。
この委員会でも初回に更田委員が問題提起し、2回目には資料も配付されたようだが、議論されていない。8回めでもさして議論されず、共用しないこととしか記述されていない。
一カ所に10基(福島1+2)、7基(柏崎)、さらに20km圏内に(敦賀、大飯、高浜)13基+(さらに計画中2基)+atr+fbrが集中立地している。このような特定地域集中立地は世界的に類をみない恥ずべきことである。リスク分散、事故対応可能性を高めるためにも、複数基立地は禁止すべきである。同様に、使用済み燃料については、原子炉から一定の距離を確保して保管させるべきである。

 これらを反映した新しい規則にすべきである。




 同時に 原子力規制委員会設置法の一部の施行に伴う関係規則の整備等に関する規則(案)等に関連する内規に対する意見募集について  参考資料:今回の意見募集に係る諸規定と許認可との関係【PDF:105KB】 についても同様に投稿  →後者は受付口がないが、3つすべてに対して投稿。

(1)論点
・7月中旬予定の施行時点から、必要な機能を全て備えていることを求める
  については、国民への説明、理解を経た上で施行する。に修正すべきである。

・7月中旬予定の施行の5年後から求める(施行後5年間は適用猶予)
 については 猶予を認めるべきではない。猶予を認められているのは、
   原子炉冷却材圧力バウンダリの減圧機能
    格納容器内雰囲気の冷却・減圧・放射性物質低減機能
    格納容器の過圧破損防止機能
     いわゆるフィルタベントなどを含む、事故発生時に極めて重要な機能群である。これなしで運転させれば、福島同様、放射性物質の大気放出が生じる。猶予を与える必要はない。

(2)理由
 以下がその理由である。
・福島原発災害の分析不足
 旧保安院への東電通報資料 によると、2011/3/11 23:48時点で、1号基タービン建屋内の線量が1.2msv/hに上昇した。 2012/ 3/19原子力学会特別セッション で東電・宮田氏は、これだけの線量が観測されたので、液相からの漏洩だと考えられる、最終報告書では分析結果を報告したいと述べたが、残念ながら最終報告書には記述がない。
国会事故調も1号基における地震直後の漏水の可能性を指摘している。これにみられるように地震による影響は未解明である。この段階で新基準をつくっても意味があるものができるとは考えられない。

・手順の問題点
短期間であることは言うまでもないが、そのプロセスで国民の意見を取り入れていない。要点毎に国民の意見を取り込むべきである。

・国民への説明や意見を
この委員会に原発をとりやめるか否かを決定する権限、能力、意欲などがないことはあきらかではあるが、2030年には脱原発が決定されている。即座にやめることも可能である。それら原発の状況、ありかたを含めて国民に説明し、その意見を問うべきである。
今回の指針についても事業者に意見をきくだけでなく、国民への、説明、意見の反映を十分に行うべきである。

・世界最高水準ではない:時間をかけた議論が必要
世界最高水準の規制をめざしたはずであるが、活断層の考慮範囲はnrcよりも狭く、複数基立地の検討も簡単にしか行われておらず、事業者による申請時の各種調査、(運転時)検査も申請事業者による調査が是認されている。
日本の原子力法体系のいびつさの是正ふくめた長期的な議論が必要である。なお、更田委員は、13回委員会で、長期間止めるとまた別の懸念が生じると発言した。
いい加減な原発を稼働させることこそ懸念すべきであり、上記発言を撤回すべきである。

・原子力産業界から便益を受けた委員の利用
新安全基準(設計基準)概要版では、「1.東京電力福島第一原子力発電所事故以前の安全規制への指摘」として項目が挙げられているが、国会事故調が指摘した、「規制の虜」への言及がない。電力会社、電事連などが学会をはじめとした団体に干渉し、基準を甘くしてきたことを自覚し、反省すべきである。
阿部、山口、山本委員は3年に限定しても原子力産業との共同研究など便益供与を受けている。これで中立な議論ができるはずはない。彼らをはずした中立な体制で議論すべきである。
なお、阿部氏のホームページによると、h15以降、三菱重工から研究費を受けている。今回のパブコメの論点とはずれるが、3年という年限を切らず、過去すべてを申告させるべきである。

・検討範囲の不足
○複数基立地の禁止、使用済み燃料の原子炉内併設禁止について、
福島原発災害であきらかなのは複数基立地、および原子炉建屋内に使用済み核燃料を保管するリスクである。まずは、これを禁止すべきである。
原子炉を隣接、さらに燃料プールを建屋内に設置するということは、単一の原因によって同時に複数の問題が生じ、さらに、それへの対応がより困難になる。このことは事故のプロセスをみるだけでも明らかな課題である。
この委員会でも初回に更田委員が問題提起し、2回目には資料も配付されたようだが、議論されていない。8回めでもさして議論されず、共用しないこととしか記述されていない。
リスク分散、事故対応可能性を高めるためにも、複数基立地は禁止すべきである。同様に、使用済み燃料については、原子炉から一定の距離を確保して保管させるべきである。


 以下、のように多量の案文がパブコメにかけられている。上の方から重要だと考えられるので、とりあえずa)について送信。

3.主要なポイントについて

1)60年延長について

 40年で原則廃炉が閣議決定された。

 まずは原則通り運用すべきであり、いまの段階から原則とはずれた運用を準備する必要はない。
  手順書「(48)発電用原子炉の運転期間延長認可制度に係る実用発電用原子炉の設置、運転等に関する規則の規定の解釈(内規)(仮称)(49)実用発電用原子炉施設における高経年化対策実施ガイ(仮称)」
 に、40年までの延長方法と同様であると記されているが、とんでもない。

 米国NRCですら、60年延長基準設定のため、慎重な議論を行った。
参考)電事連 「米国における原子力発電所の高経年化対策への取り組み」
http://www.fepc.or.jp/library/kaigai/kaigai_kaisetsu/1222324_4141.html
 少なくとも米国NRCの60年延長評価スキーム以上のことを行ってから詳細を決定すべきである。
 いずれにしても、それがなされていない段階で このような議論をする意味はない。40年を越えるものについては、原則受け付けても 評価できる段階にないことを考えて、削除すべきである。

2) 


4. 個別条文
 原子力規制委員会設置法の一部の施行に伴う関係規則の整備等に関する規則(案)等に対する意見募集ついて|意見公募(パブリックコメント)|原子力規制委員会


 ざっとみて重要なものから適宜送信した。

a)  参考資料:規則等案文(1)~(11)【PDF:4.8MB】  委員会規則

(1) 実用発電用原子炉の設置 について

p.6 発電用原子炉施設の設置及び運転に関する技術的能力に関する説明書
  社会環境等の状況に関する説明書
   あいまいである。何を記述させ、評価するのかを明示すべきである。人口密集地には設置すべきではないし、なにがいいたいのか不明である。

p.7旧則 の状況も当然あり得るので、この記載は残すべきである。
 原子炉の操作上の過失、機械又は装置の故障、地震、火災等があつた場合に発生すると想定される原子炉の事故の種類、程度、影響等に関する説明書
 
 著しい損傷 とは何かを定義すべきである。その上で、
 事故の進展予見可能性の低さをふまえて、「著しい損傷については、損傷がおきる可能性のある事故が発生した場合も含む」とすべきである。

p.136
 40年廃炉が原則である。
 よって、
 2 法第四十三条の三の二十二第一項 
 3 法第四十三条の三の二十二第一
    のの項は不要である。
 同様に p。198 百十三条には 「なお、原則40年で廃炉が原則である」ことを明示する。

p.139 以降 各種対策で
 必要な人員

 とは何かを明示する必要がある。
  運転員のみならず、現場作業員など。具体的な作業、分担などを踏まえて24時間配置させる。
 教育、訓練の内容の明示

p.145 運転に関して
 八 非常の場合に講ずべき処置を定め、これを運転員にに守らせること
 東電の場合、51度を超える温度変化を禁じ、それを緊急時もまもった愚かな運転員が存在する。非常時にはマニュアルではなく、機転の利く者を配置させるべき。

p.149 貯蔵について
 リスク分散の観点から、
 使用済み燃料プールを建屋内に併設してはならないことを明記。

p.151廃棄
 「放射性物質の濃度が原子力規制委員会の定める濃度限度を超えないようにすること」が四項にしかかかっていない。いずれの場合にもこれは厳守させるべきであるので、

第九十条の最後に
 「廃棄にあたっては、以下のいずれの場合においても、放射性物質の水中もしくは大気中における濃度が原子力規制委員会の定める濃度限度を超えないようにすること」を追加。


p.155 照射 の定義が不明。 明示すべきである。
  使用済みと同義か?


p.167 中央制御室
 十三 中央制御室については、共用を認めないことを明示。
 さらに、 遠隔にて制御できる緊急制御室の設置を義務づける。
 容易に の定義が必要。地震加速度、飛行物の衝突にも耐える など明確化。

p.176 廃止処置に関して
 いずれも 「関すること」 を報告すればよい内容となっている。実効性を確保するために、他と同様、最低限、「教育、訓練」の実施を課す。

p.187
 事故が発生し、被害が発生した場合に保障できる能力を確認するために、
十一 事故が発生した際に充分な保障能力をもっていることを確認できるための書類
 を追加。

p.215 以降 フレキシブルディスク =フロッピーディスク? のような時代遅れの媒体での保存、提出は不要である。メール、USBなど適切な電磁媒体 でよい。
 他の規則についても同様である。

p.463 
 (罰則)を新設
 NRCでは、違反した場合には罰則を科している。最近の例では、Kewaunee原発での訓練不足に対して7万ドルの罰金を課した。東京電力、関西電力などいずれも過去に検査結果の隠蔽、不正な検査を行ってきた。それが繰り返されているのは、企業の体質の問題であると同時に罰則がないことも一因である。
 違反した場合には、運転許可取り消しといった厳しい罰則を設けるべきである。

 →検査、運転などに違反した場合には運転、設置免許の停止を行う。



(2)核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律 にもとづく基準など
pdf p904からのページ番号1~
炉心の 著しい損傷  の定義がない。
 当然定義すべき

p.3「重要安全施設」とは、安全施設のうち、特に重要な安全機能を有するものをいう。
 →電力会社などが恣意的に決定する現状の弊害をさけるために、 明確に規定すべき。
 現在のS,Aクラスを Sクラスに格上げ BをAに格上げする。

p.4 バウンダリについて
 ここでの定義は狭すぎる。浜岡原発での海水流入にみられるように、二次系についてもバウンダリとして考慮すべきである。

p。8 重大事故
 の定義がない。

p.11 第九条安全施設は、発電用原子炉施設内における溢水が発生した場合において当該発電用原子炉施設の安全性を損なうおそれがないものでなければならない。
 安全性の定義がないためトートロジカル。
 安全性の定義を。
  放射性物質が規定した量以上は放出されない、制御下の可能な状態である、など。

p.15 第十六条発電用原子炉施設には、次に掲げるところにより、通常運転時に必要とする燃料又は使用済燃料(以下この項において「燃料等」という。)の取扱施設(安全機能を有するものに限る。)を設けなければならない。


この項については使用済み燃料の併設を禁止すべきである。

→以下のように修正
 第十六条 発電用原子炉施設には、次に掲げるところにより、通常運転時に必要とする燃料(以下この項において「燃料等」という。)の取扱施設(安全機能を有するものに限る。)を設けなければならない。
 なお、使用済み燃料については使用後速やかに、原子炉と同時災害にあわない施設に移送しなければならない。

さらに 貯蔵設備は地上面もしくは地下に設置しなければならない。
 4号基のSFPが、あれほどきぐされたのも 4-5階という不安定な場所に設置したからである。そのような愚かな設計をさせるべきではない。


理由→複数基立地の禁止、使用済み燃料の原子炉内併設禁止について、
福島原発災害であきらかなのは複数基立地、および原子炉建屋内に使用済み核燃料を保管するリスクである。まずは、これを禁止すべきである。

原子炉を隣接、さらに燃料プールを建屋内に設置するということは、単一の原因によって同時に複数の問題が生じ、さらに、それへの対応がより困難になる。このことは事故のプロセスをみるだけでも明らかな課題である。
この委員会でも初回に更田委員が問題提起し、2回目には資料も配付されたようだが、議論されていない。8回めでもさして議論されず、共用しないこととしか記述されていない。
一カ所に10基(福島1+2)、7基(柏崎)、さらに20km圏内に(敦賀、大飯、高浜)13基+(さらに計画中2基)+atr+fbrが集中立地している。このような特定地域集中立地は世界的に類をみない恥ずべきことである。リスク分散、事故対応可能性を高めるためにも、複数基立地は禁止すべきである。同様に、使用済み燃料については、原子炉から一定の距離を確保して保管させるべきである。

 参考までに4月に米国Arkansas NPPで発生した事故の内容。
 →クレーン操作中、落下、他号機にも影響が及んだ。
 このような予期せぬことが生じ得る。
http://public-blog.nrc-gateway.gov/2013/04/01/easter-sunday-and-arkansas-nuclear-one/
 複数基設置の禁止、使用済みプールの建屋内併設禁止を早急に決定すべきである。


p.22 第二十三 、計測制御系統施設 について
 福島の教訓を踏まえて、異なる原理による2種類以上の計測器を 多重化して装備させることを明示。
 測定値については、そのまま市民に提供できるように、通信機能も備えること を明示。

 p47 計装設備についても同様である

p.26
第二十六条 原子炉制御室等
四 として下記を追加。
 福島での教訓は複数基設置のリスクである。複数基立地および、万が一複数基設置するにしても、併用による安全性向上がみこめるはずもないので、禁止する。

p.32 6 発電用原子炉施設には、
 上述のとおり、二次系も追加すべきである。以下8,9項についても同様。

一次冷却系統→一次および二次冷却系統

p.33 以降 (保安電源設備)
 福島で地震によって夜ノ森系統などが倒壊したことを踏まえて、
 外部からの電線路は極めて重要な設備であり、SもしくはAクラスの耐震基準を満たす。
 を追記。
p.48
  (緊急時対策所)
 については、猶予を設けず、即座に義務化させることを明示。


pdf p955- 核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律に関する規則
  (罰則)を新設
 NRCでは、違反した場合には罰則を科している。最近の例では、Kewaunee原発での訓練不足に対して7万ドルの罰金を課した。東京電力、関西電力などいずれも過去に検査結果の隠蔽、不正な検査を行ってきた。それが繰り返されているのは、企業の体質の問題であると同時に罰則がないことも一因である。
 違反した場合には、運転許可取り消しといった厳しい罰則を設けるべきである。

 →検査、運転などに違反した場合には運転、設置免許の停止を行う。

pdf p1107- 核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律 研究開発炉について
 

(3) だんだん疲れたので、
すべてに関して

 複数基設置の禁止
 使用済み燃料プールの建屋内併設禁止
 計測機器の多重化、多様化
  市民への測定結果の即時提供

 違反した場合の罰則
 NRCでは、違反した場合には罰則を科している。最近の例では、‪Kewaunee原発での訓練不足に対して7万ドルの罰金を課した。東京電力、関西電力などいずれも過去に検査結果の隠蔽、不正な検査を行ってきた。それが繰り返されているのは、企業の体質の問題であると同時に罰則がないことも一因である。
 違反した場合には、運転許可取り消しといった厳しい罰則を設けるべきである。
  →検査、運転などに違反した場合には運転、設置免許の停止を行う。
 を追記。



この他に、

参考資料:規則等案文(12)~(15)【PDF:272KB】  告示 
参考資料:規則等案文(16)~(22)【PDF:3.9MB】 内規(行政手続法の審査基準に該当するもの)
参考資料:規則等案文(22)~(27)【PDF:20.9MB】  同上
 もある。

5. 個別条文
 原子力規制委員会設置法の一部の施行に伴う関係規則の整備等に関する規則(案)等に関連する内規に対する意見募集について|意見公募(パブリックコメント)|原子力規制委員会


内規案文集(28)~(36)【PDF:10.8MB】 基準に関連するもの(火山など)
    内規案文集(37)~(42)【PDF:1.70MB】 同 (地質、津波など)
    内規案文集(43)~(47)【PDF:14.2MB】 手続きに関連するもの(設置、運転)

      内規案文集(48)~(49)【PDF:290KB】 同(老朽化、延長)


       40年で原則廃炉が閣議決定された。

       まずは原則通り運用すべきであり、いまの段階から原則とはずれた運用を準備する必要はない。

       手順書「(48)発電用原子炉の運転期間延長認可制度に係る実用発電用原子炉の設置、運転等に関する規則の規定の解釈(内規)(仮称)(49)実用発電用原子炉施設における高経年化対策実施ガイ(仮称)」
       に、40年までの延長方法と同様であると記されているが、とんでもない。

       米国NRCですら、60年延長基準設定のため、慎重な議論を行った。
      参考)電事連 「米国における原子力発電所の高経年化対策への取り組み」
      http://www.fepc.or.jp/library/kaigai/kaigai_kaisetsu/1222324_4141.html
       少なくとも米国NRCの60年延長評価スキーム以上のことを行ってから詳細を決定すべきである。
       いずれにしても、それがなされていない段階で このような議論をする意味はない。40年を越えるものについては、原則受け付けても 評価できる段階にないことを考えて、削除すべきである。